


数多くある麺類の中でそばが一番好きだ!
そばをこよなく愛する私が「北舘製麺」のそばに出会ったのは、ちょうどそばの収穫真っ最中である9月だった。
北緯40度、岩手県の冷涼な安比高原の裾野に位置する「北舘製麺」。そばの食味は挽き立て・打ち立て・茹で立ての「三立て」が大切というが、一年中、家庭で美味しくいただけるそばが商品化されていると聞き、さっそくその美味さの秘密を探るべく足を運ぶことにした。
安比高原のスキー場の方向へ車を走らせると、真っ白な花をつけた一面のそば畑が広がる。「これが私たちのそば畑です」と北舘製麺の充史(あつし)さんが教えてくれた。
子どもの頃からそばに慣れ親しんできた充史さん。営業からそばの栽培までなんでもこなし、農業機械を動かす特種免許まである「北舘製麺」の頼りになる4代目だ。
「北舘製麺」では自社農園と契約栽培農家の玄そばの大規模栽培を展開。やはり収穫のこの時期が一番ワクワクするのだそう。各契約農家を合せると500ha程になる。地元の玄そばだけを使用するから、秋の収穫でこの年の出荷量が決まるわけだ。
「そばは挽きたてが一番。そばの香り、そして甘みが断然違います。だから挽き立てにこだわっています」。
一般の製麺所は挽いてから粉にして保管、もしくは粉を手に入れて製品を作っている。
毎日そば作りを行う「北舘製麺」では収穫した無農薬の玄そばを低温倉庫で保管。そばを作るその日に大型石臼で挽いた新鮮なそば粉だけを使用。(つなぎに使用する小麦に関しては粉で保存している)
玄そばを挽くのは大型の石臼。機械で製粉するとカドが立つ。まろやかなそば粉にこだわるから、大型の石臼で少しずつ挽いているそう。うん、なるほど細かいところにもこだわっているのだ。
挽き立てのそば粉を使用してそばを打つ。「打ち立て」のそばは乾燥を経て、1週間から10日くらいで店舗に並び、賞味期限は60日と短め。打ち立てそばの鮮度を保つには水分量が大切らしい。通常の乾麺は水分量14.5%ほど。「北舘製麺」の期間限定半なまそばは水分量が約24.5%!「できるだけ半なまの状態で家庭へ届けたいので、挽いてから1週間で出荷します。保存料は使用しませんが、乾燥を防ぐため少量のアルコールを使用します」と充史さん。美味しさを保ちながら保存する昔の人の知恵ですね。
そば粉の甘い香りをかいだら、お腹が減ってきた。さっそく製品を購入して食べてみる事に。半なまのそばは、あっというまに茹で上がるから時間に気をつけよう。さっそくかけそばにして食べてみる事に。勢いよくススルとつるりとしたのど越しが絶品。乾麺は温かいそばで食べるのが好きだが、モリにしてもうまかった。そばつゆにちょこんとつけて食べるとそばの香りが口いっぱいに広がりこれまた美味い!
「食品にたいする安心、安全が一番と考えています」
充史さんはしっかりした眼差しでそう言った。
「目が届く範囲の原料が入ってくるので安心して作ることができます」と話す。
どこで、どのように収穫されたのかわかるのが地場の良いところ。実は食べてくれる人の側から見た、本当に食べたいそばを提供するべく、毎日のそば作りの中で品質の向上に努めているのだ。
やせた土地でも育つというのは少し誤解がある。そばは吸肥能力が高いから土地を選ばないそうだ。
おいしいそばを栽培するには、しっかりした管理が必要である。そばに適した土壌は湿気が少なく、昼夜の気温の差が大きいほど生育がよい。播種から刈り取りまで3カ月足らずの短期間作物であるゆえ救荒作物として重視されてきた。日本にも「そばは七五日たてば旧へかえる」という諺がある。そばは75日でまたそばの実に戻るという意味だ。
いいこと尽くしのようであるがそんなことはない。面積に対する収穫の量は米に比べて少ない。米が1反あたりの収量が10俵とすると600kg。そばは75〜80kg。その分貴重な穀物として昔から人々に愛されてきたのだろう。